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Case Study #001  /  Pharmaceutical  /  8 Months

工数予実管理の自動化で、
業務を標準化する。
工数予実管理の自動化で、業務を標準化する。

ある製薬会社が直面したのは、月次レポート作成だけで担当者が丸2日を費やす業務だった。8ヶ月間のプロジェクトで、何が変わったのか。

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Chapter 01

月末に、
誰もが残業していた。

それは、特別なことではなかった。ただし、誰もそれを当たり前だとは思っていなかった。

ある製薬会社の経営企画部門。月次決算が近づくと、担当者のデスクには複数のExcelファイルが並ぶ。各部署から送られてくる工数報告、プロジェクトごとの進捗、在庫の動き――それらを集計し、経営会議用のレポートにまとめるのが彼らの仕事だった。

問題は、そのプロセスがほぼ手作業だったことだ。

各部署から送られてくるExcelの形式はバラバラ。ある部署は週次でまとめて送ってくる。別の部署は日次で送ってくるが、列の並びが違う。集計担当者は受信した複数のシートを開き、形式を統一し、関数で集計し、グラフを作り、コメントを書く。

月末締めにかかる時間: 丸2日。

しかも、入力ミスは散発した。一桁違う数字、列がズレた集計。気づくのは経営会議の場だったり、ひどいときは翌月の照合作業だったりする。データの信頼性は、担当者の集中力に依存していた。

「経営判断に使えるデータかと言われると、正直、自信を持って『はい』とは言えませんでした。」――プロジェクト関係者の証言(匿名)

さらに深刻だったのは、業務の属人化だった。

在庫管理業務は、長年同じ担当者が回していた。手順書はあるが、実態とは乖離している。トラブルが起きたときの対処法、特定取引先との連絡フロー、過去の例外処理――すべてが担当者の頭の中にあった。

担当者が休めば業務が止まる。担当者が転職すれば、引き継ぎに数ヶ月かかる。経営層は危機感を持っていたが、改善のための打ち手を組み立てられる人材が社内にいなかった。

「業務改善をやらなければ」という認識はあった。ただ、誰がそれを推進するのか――その問いに、明確な答えがなかった。

業務改善をやりたくないわけじゃない。
ただ、誰がそれを引っ張るのかが、決まらなかった。

経営企画部門のマネージャーは、外部の力を借りることを決めた。条件は3つ。

1. 製薬業界の業務を理解していること
2. 大手コンサルファーム出身レベルのロジカルさを持つこと
3. 現場に入り込んで実装まで担当できること

3つ目が、最も難しかった。「設計はできるが実装は別チーム」というコンサルは多い。だが、必要だったのはそれではなかった。

ExpertMatchを通じて、1人のエキスパートにたどり着いた。

Chapter 02

アサインされたのは、
PM/PMO型の
エキスパート。

コンサルタントには「型」がある。このプロジェクトに必要だったのは、戦略型でも分析型でもなく、徹底した現場入り込み型だった。

担当したエキスパートは、大手総合コンサルティングファーム出身のPM/PMO専門家だった。

製薬・通信・行政・建設・電力――複数業界を横断した実績を持つ。担当したプロジェクトは20を超え、すべてで「品質・コスト・スケジュール」の三軸を管理してきた。

特徴的なのは、コンサルとしてのキャリアが「分析屋」で終わらなかったことだ。

大手ファーム時代、彼は経費精算システム導入や決算締早期化プロジェクトに従事した。提案書を書くだけでなく、ベンダーと連携してシステムを動かし、現場担当者にトレーニングを施し、業務マニュアルを作り直す――実装の最後の1メートルまで自分の手で完遂することを徹底してきた。

「現場で使われないシステムは、どれだけ綺麗な設計書があっても意味がない。だから、現場に入り込むことを最優先しています。」――担当エキスパートの哲学
業務改善 × PM型コンサルタント
大手総合コンサルファーム出身 PM/PMO案件 20件以上 業界横断対応 現場入り込み型 BPR・業務標準化 ロジカル思考+実装力
12+
ファーム経験年数
コンサル業界でのキャリア
20+
PM案件数
品質・コスト・スケジュールを一貫管理
5+
業界横断
製薬・通信・行政・建設・電力

このプロジェクトに彼がアサインされた理由は明確だった。

製薬業界の経験は限定的――だが、それは問題にならなかった。重要だったのは「業界知識」ではなく、「業務改善のフレームワーク」と「最後まで完遂する実行力」だったからだ。

ExpertMatch のマッチングロジックは、業界一致ではなく「課題タイプとエキスパートタイプの一致」を優先する。今回のような業務標準化案件には、業界経験よりPM/PMO型の経験値の方が、はるかに重要なファクターになる。

Chapter 03

なぜ
「既存ツール活用」を
選んだか。

業務改善には、複数の選択肢があった。彼が選んだのは、最も地味で、最も難しい道だった。

業務改善プロジェクトの最初の局面では、3つの選択肢が議論される。

選択肢 A

新規システム導入

SAP、Oracle、Workday――大規模ERPに置き換える。最も派手で、コンサルファームが好みやすいルート。問題は、コストと期間。中堅企業には重すぎる。

選択肢 B

SaaSパッケージ導入

クラウド型の業務管理ツールを導入する。比較的軽量だが、既存業務との接続に手間がかかる。「ツールに業務を合わせる」発想になりがち。

選択肢 C ← 採用

既存ツールの活用最大化

今あるExcel・Accessを、設計から組み直す。新規投資はゼロに近いが、知見と工数が大量に必要になる。

担当エキスパートが選んだのは、選択肢Cだった。

「お金をかけて派手にやるのは簡単です。でも、それで現場が回らなくなったら、プロジェクトは失敗です。」

理由は3つあった。

第一に、課題の本質が「ツール不足」ではなく「業務の整理不足」にあったこと。新しいツールを入れても、混乱した業務をそのまま乗せれば、混乱の規模が大きくなるだけだ。

第二に、現場の受容性。長年Excelで回してきた担当者に、いきなり新システムを使わせるのはリスクが高い。段階的に既存環境を進化させる方が、定着率が劇的に上がる。

第三に、投資対効果。新規システム導入なら数千万円のコストがかかる。既存ツール活用なら、コンサルフィーのみで完遂できる。経営層への説明もしやすい。

「派手じゃない選択ほど、実は最も効果が出る。」これが彼の信念だった。

派手じゃない選択ほど、
実は最も効果が出る。

ただし、選択肢Cには罠もある。

「既存ツールの活用」という言葉は、聞こえは良いが、実態は途方もない作業量を伴う。

業務フローを徹底的に可視化し、Excelの関数を組み直し、Accessのクエリを再設計し、運用ルールをドキュメント化する。地味で、時間がかかり、目立たない。

「これを8ヶ月でやり切る」――このコミットメントが、プロジェクトの起点だった。

Chapter 04

8ヶ月の旅。

プロジェクトは3つのフェーズに分かれた。それぞれに、固有の難しさと、固有の発見があった。

Phase 1: 1〜2ヶ月

現状把握・課題整理

最初の2ヶ月は、ひたすら「観察」に費やされた。

エキスパートは経営企画部、財務部、各事業部の担当者にヒアリングを重ねた。30名以上に話を聞いたという。狙いは2つ。

ひとつは、業務フローの実態を把握すること。手順書は存在したが、現実とは乖離していた。誰が、いつ、何のためにそのExcelを更新しているのか――文字化されていない暗黙のルールを、徹底的に掘り起こした。

もうひとつは、「なぜそのやり方をしているのか」の理由を捕まえること。一見非効率に見える作業にも、過去の経緯がある。トラブル対応で生まれた手順、退職者の引き継ぎで増えた工程、システム導入時の妥協点――これらを理解せずに改善案を出せば、必ず現場の反発を招く。

ヒアリング後、彼は業務フローを全部マッピングし直した。担当者と一緒にホワイトボードに書き出し、認識の食い違いを潰していく。3週間続いたこの作業で、関係者全員が「自分たちの業務がどう繋がっているか」を初めて全体俯瞰できた。

最初の3週間で、関係者全員が、自分たちの業務の全体像を初めて見た。

この段階で、すでに変化は始まっていた。

「あの部署のあの作業、自分たちと重複していたんだ」「この帳票、本当に必要だったか?」――可視化されたフローを見て、担当者自身が改善案を出し始めた。

外部から「こうすべき」と押し付けるのではなく、内側から改善が芽吹く環境をつくる。これが、Phase 1の真の成果だった。

Phase 2: 3〜5ヶ月

Tobe設計・ロードマップ策定

Phase 1で集めた情報をもとに、彼はあるべき姿(Tobe)を設計した。

工数予実管理については、Excelテンプレートの統一から始めた。各部署が個別にメンテしていたフォーマットを、ひとつに統合。マスタデータを別シートで管理し、入力ミスを構造的に防ぐ仕組みを組み込んだ。

在庫管理業務については、Accessデータベースの再設計を行った。既存のクエリを整理し、属人化していた手順を関数とフォームでカバー。誰が触っても同じ結果が得られる状態を目指した。

ただ、ツール側の改善だけでは足りない。「業務を回す人間」の側にも仕組みが必要だった。

そこで彼は、業務マニュアルとロードマップを並行して整備していった。月次でやるべきこと、四半期でやるべきこと、年次でやるべきこと――時系列に整理し、誰でもチェックリストで動ける形にした。

「ツールを直すだけじゃ、人は動かない。ツールと、ルールと、責任の所在。この3つを同時に整えないと、定着しません。」

ここでも彼は、現場担当者を設計の共同作業者として巻き込んだ。「これでいいですか?」と聞きながら進める。完成品を上から渡すのではなく、一緒に作り上げる。当事者意識を持ってもらうための、最大の工夫だった。

ロードマップの完成は、プロジェクト全体の中盤の山だった。経営層への報告会では、3ヶ月後・6ヶ月後・1年後の姿が、誰の目にも明確に見える形で提示された。「この計画なら、社内で進められそうだ」――経営層の言葉が、Phase 2の成功を物語った。

Phase 3: 6〜8ヶ月

実装・定着支援

最後の3ヶ月は、ひたすら「定着」に費やされた。

新しいExcelテンプレートとAccessデータベースは、設計通りに動いた。ただ、それだけでは足りない。運用が回って初めて、プロジェクトは成功したと言える。

エキスパートは、担当者へのトレーニングを自ら設計した。座学ではなく、実際の業務の流れに沿ったハンズオン形式。「今月の月次レポートを、新しい仕組みで作ってみる」――本番のデータを使い、本番の手順を踏ませた。

最初の月は、彼自身が担当者の隣で並走した。質問に答え、つまずきを記録し、マニュアルに反映する。「マニュアルは生き物だ」というのが彼の持論だった。完成品を渡して終わりではなく、現場で使われながら改善されていく。

「マニュアルは、印刷した瞬間から古くなり始める。だから、現場で更新できる仕組みごと、渡さないと意味がない。」

トラブルは、ゼロではなかった。

旧システムからのデータ移行で、過去ログの一部が欠損する問題が発生。彼は週末に出社し、Accessのクエリを書き直して復旧させた。担当者がインフルエンザで休んだとき、新人が代理で月次レポートを作成し、無事に完了させた――これが、業務標準化の最初の成果だった。

8ヶ月目、最後の経営報告会。

経営企画部のマネージャーが、こう発言した。「プロジェクトが終わっても、業務は止まらない。それを実感できたことが、最大の成果です。」

エキスパートは静かに頷いた。自分がいなくても回る組織を作る――それが、PM/PMOとしての彼の哲学だった。

プロジェクトが終わっても、
業務は止まらない。
それを実感できたことが、
最大の成果。

Chapter 05

8ヶ月後、
何が変わったか。

数字で語れる成果がある。そして、数字では捉えきれない変化もある。

大幅減
工数削減
月次レポート作成業務
解消
属人化業務
在庫管理業務パッケージ化完了
向上
報告精度
経営層からのフィードバック

数字の裏側で、組織には3つの変化が起きていた。

第一に、担当者が「本来業務」に戻れた。

月次レポート作成にかかっていた丸2日が、半日以下に圧縮された。空いた時間は、データの分析や、改善提案の起案に使われるようになった。経営企画部本来の役割――「経営判断を支える分析」――に、ようやく時間が割けるようになったのだ。

第二に、業務が「人」から「仕組み」に移った。

在庫管理業務は、誰が担当しても同じ品質で回せるようになった。担当者の引き継ぎは、以前なら数ヶ月かかったが、新しい体制では2週間で完了する。人が抜けても止まらない組織――それが現実になった。

第三に、経営層との対話の質が変わった。

データの信頼性が担保されたことで、経営会議の議論が変わった。「この数字、本当に正しい?」という質問が消え、代わりに「この数字を踏まえて、次に何をすべきか?」という議論が始まった。意思決定のスピードが上がり、判断の質が上がった

「数字を信じられるようになって、経営会議の空気が変わりました。議論の質が、明らかに上がっています。」――プロジェクト関係者の証言(匿名)

これらの変化は、ひとつの数字に集約されるものではない。「組織の体質改善」という、より深い成果だった。

Chapter 06

業界を超えて
応用できる、
3つの示唆。

これは、製薬業界だから成立した話ではない。業務改善の本質は、業界を超えて共通している。

このプロジェクトから抽出できる示唆は、製薬業界に限定されない。業務改善に取り組むすべての中堅企業に応用できる普遍性を持っている。

1「ツールの問題」と思われていることの大半は、「業務の問題」である

業務が回らない原因を、ツールの古さに求めるケースは多い。だが、本質は「業務フローの整理不足」にあることがほとんどだ。新しいツールを入れる前に、今ある業務を可視化することから始めるべき

可視化の段階で、現場自身が改善案を出し始める。これは多くのプロジェクトで観察される現象だ。外部の専門家の役割は、「答えを持ってくる」ことではなく、「答えが内側から出てくる環境を作る」ことにある

2「派手な投資」より「地味な再設計」が効くことがある

業務改善というと、ERPの導入やSaaSの全面採用といった大規模投資が想起されがちだ。だが、既存ツールを再設計するだけで、課題の8割が解決するケースは少なくない。

派手な投資には、コスト・期間・現場の受容性という3つのハードルがある。地味な再設計は、これらすべてを回避できる。経営層への説明もしやすく、現場の反発も少ない。

ただし、地味な選択は実行が難しい。徹底した可視化と、根気強い設計力が要求される。だからこそ、外部のプロが必要になる。

3業務改善の真の成果は「人が抜けても回る組織」である

数字で測れる成果(工数削減、コスト削減)も重要だ。だが、より本質的な成果は、「業務が個人に依存しない状態を作ること」にある。

属人化した業務は、退職・休職・組織変更のたびに崩壊する。組織のレジリエンスが弱い。業務標準化は、長期的な経営リスクを下げる投資でもある。

このプロジェクトで実現した「新人でも月次レポートが作れる状態」は、表面的には小さな変化に見える。だが、経営継続性の観点では、極めて大きな変化だった。

業務改善の真の成果は、
「人が抜けても回る組織」を
つくることにある。

これらの示唆は、製薬・通信・行政・製造業――どの業界でも応用可能な、普遍的な原則だ。自社の業務に当てはめてみたとき、何が見えてくるか?

それを考える起点として、この事例が役立てば幸いだ。

Chapter 07

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月次業務の集計・レポート作成に、担当者が数日を費やしている
業務が特定の担当者に依存していて、引き継ぎが困難な状態にある
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PMO機能が社内になく、プロジェクトが遅延・品質低下している
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